ポルシェ x RECARO

mag04【VOL.01】 ポルシェ x RECARO

1906年創業。前身となるロイター・シュトゥットガルト車体製造会社がRECAROへと社名変更したのが1963年。その2年後となる1965年にRECAROのブランドを冠する初のスポーツシートを発表。2015年はそれから50年という節目の年。RECAROが今も変わらず大切に想う当時のストーリー。ポルシェ911誕生の裏にあるもうひとつのストーリー。

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レカロの前身となる「ロイター・カロッツェリア」が産声を上げたのは1906年。馬車製造職人であった創業者のヴィルヘルム・ロイターが、馬具をモチーフとした自動車の車体製造を手掛ける会社として、シュトウットガルトの地でスタートさせました。

 

当時のドイツは、エンジンやシャシーを開発する車両製造会社と、ボディワークを手掛ける車体製造会社(コーチビルダー)の双方の存在によって、自動車産業が急速に発展。そんな中、ロイターは今日のコンバーチブルの原型となる新しい車体の開発および特許を取得するなど、独創性豊かな叡智でダイムラー、メルセデス、マイバッハ、オペル、ブガッティ、ホルヒ、アウディ、フォルクスワーゲン、そしてポルシェといった、当時のドイツ(一部国外)にあった車両製造会社に向けた車体製造を手掛けていきました。

 

驚くべきは、その多くが今日まで続く自動車メーカーの開発1号車、または生産1号車であったこと。ポルシェの1号車(オーストリア時代に開発された試作車は含まず、ドイツでの生産第1号車)となる356プリA(1949年)もまた、ロイターが車体製造を請け負いました。その証拠にドイツにあるポルシェ・ミュージアムや日本のトヨタ博物館に展示されている356プリAの姿を見れば、ロイターのエンブレムがそのボディに誇らしげに貼り付けられていることが確認できます。

 

その後、第二次世界大戦の終結を契機に大きく変遷した自動車産業界の流れ(モノコックボディの開発が始まり多くの車両製造会社が量産体制を構築する機運が高まった)に乗り、ポルシェが自社工場を求めるようになったのは、ごく自然な展開でした。そして1963年、ポルシェは356やフォルクスワーゲン・ビートルなどの車体製造を手掛けていた、1000人ほどの工員が働くロイターの工場(ポルシェ・ミュージアムの向いにあるツゥフェンハウゼン工場内に存在する煉瓦造りの建物で、現在は有形文化財建造物として指定)を譲り受けることになりました。

 

そして、工場を譲り渡したロイター自身は、「Reutter Carosserien」の頭文字を取って「RECARO」と社名を改め、それまでのコーチビルダーから一転、業界初となる「自動車専門のシートメーカー」の道を歩むことに。ポルシェ356や9011のシートの製造を手掛ける一方で、1965年には「レカロ・ブランド」を掲げた世界初のスポーツシートを発表(2015年でレカロ・スポーツシートは誕生から記念すべき50周年)。

 

レカロはスポーツシートのみならず、ヘッドレストやショルダーサポート、ランバーサポート、シートヒーターやベンチレーションなど、今日では当たり前となった新たな技術革新を次々に発表。さらには人間工学や整形医学の見地を他に先駆けて自動車シートの分野に取り入れ、運転中の腰痛予防や疲労軽減を目的とした正しい着座姿勢および着座性能を実現する、エルゴノミクスの開発までを手掛けていくのでした。

 

ここ数年、レカロが大切にしているフレーズに「ブランド・プロミス」というものがあります。ブランド自身がマーケットやすべてのお客様に約束する不変的な価値を示したもので、これは「我々はレカロというブランドを経験した多くのユーザーの評価によってここまで成長することができました。故に我々が約束すべきことは、レカロがレカロであり続けるということ。ドイツ企業の文化風土に則って、愚直により良い品質を追求し、創造的かつ革新的な挑戦を忘れず、『いつかはレカロ』と思ってもらえるようなモノづくりを続けていく」———という強い理念に基づいたフレーズです。単純に利便性を求めた見た目だけの機能やモノづくりは、レカロの果たすべき役割ではありません。新しい素材、新しい骨格、そして新たなコンセプトをもつシートの開発、そしてより良い着座性能を求めたモノづくりにこだわり続けることこそが、レカロのあるべき姿だと考えています。

 

レカロは、今日まで続くポルシェとの密接な関係の中で、モノづくりに対する価値観で共感できるところが多くあったのだと思います。ポルシェから多くのことを学び、そして多くのものを共有してきました。ポルシェ・オーナーの方と話をしていると、「ポルシェ=レカロ」と言ってもらえることがほとんどで、共通した価値観を感じることが多々あります。レカロは決して大量生産のシートメーカーではありません。むしろ少量多品種、そして何より高品質を追求するメーカーです。とは言っても、たとえレカロであってもオートクチュールではありません。そのためすべての方に満足いただける万能なものでもありません。しかしながら、ユーザーには良いところだけではなく、まだまだ足りていないというところも含めて、全てを受け入れ、そして愛情まで持っていただける。それを強く感じます。ポルシェも共通する点は多いと思います。大量生産では決して成し得ない先進的な高機能、高品質を愚直なまでに追求し続ける不変の精神がその根底にはあるわけですから。

 

現在、国内の商品ラインアップには、多くのポルシェ・オーナーに愛されているSP-Gというモデルの他に、日本独自で開発したRS-Gというサーキットとストリートのバランス良く融合したモデルがあります。さらに、レカロの先進技術に基づくインジェクション型の骨格をもつスポーツスターは、新たな着座性能と先進的なデザインが特徴のモデルとして好評を得ています。そして、そのスポーツスターと同じ構造でオートクレーブのカーボンを採用したハイエンドモデルがSP-X Avant。共にインテリアのスペースを機能的に有効活用したいというポルシェ・オーナーに、お奨めしたいモデルです。

 

創業から100年を超える歴史を持ち、今なおフェラーリ、ランボルギーニ、アウディ、フォルクスワーゲン、BMW、そしてポルシェといった数多くの一流自動車メーカーとの新たなプロジェクトに取り組んでいるレカロ。今年から日本のサーキットを走り始めたポルシェ991のカップカーに“FIA8862-2009”認証を持つレカロシート(P1300GT)が再び採用されたことも、話題となっています。「ポルシェにはやっぱり、レカロがよく似合うよね」———ファンの方からのこうした声を耳にすると、この両者の間にある「絆」のようなものが、改めて感じられるものです。

 

レカロではすでに次の100年先を目指した新たな技術開発が進められています。それは、常に他の一歩先を行く強く確かな足取りを伴いながら。自動車メーカーにOEM採用されるシートで唯一、そのブランドロゴを掲げることが認められたレカロ。アフターマーケット向けスポーツシートの世界においてもまた、50年という圧倒的な歴史を誇る先駆者であるからこそ、“進化”に対する“不変の想い”を貫くことができます。変わらないからこそ信頼され、そして愛される———レカロとポルシェはそういう部分でもやはり、似ている気がしてなりません。