田中哲也氏 x RECARO

mag06【VOL.02】 田中哲也氏 x RECARO

スーパー耐久シリーズで過去5回のシリーズチャンピオンに輝くなど、名実ともに日本でトップクラスのレーシングドライバー田中哲也氏。国産車のみならず欧州車でのレース参戦実績も豊富。NISSAN R35 GT-Rの開発ドライバー。世界のスーパーカー専門誌 “GENROQ” がサーキット試乗レポートで最も信頼するドライバーなど、数え上げればキリが無い。そしてRECAROのブランドアンバサダーでもある田中哲也氏をご紹介。

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田中哲也氏に心奪われたのは、2012年3月の仙台ハイランド。当時、R35 GT-Rの開発チーフエンジニアを担当されていた水野和利敏氏の依頼でニュルブルクリンク24時間耐久レース参戦車両のテストが行われている現場へ足を運びました。周知のとおり水野氏のクルマづくりは常に現場で鍛え上げられる。それだけにメカニックもドライバーも本当の意味でプロフェッショナルでなければならない。関わるすべてのスタッフがオーケストラのように常に同じベクトルで機能していく。レース専用車両か市販車かは問わずサーキットで行われるテストはすべてそうだとわかっていても、水野氏の現場はそれを遥かに凌ぐ”舞台”と言う。

 

田中哲也氏に話を戻すと、GT-Rのテスト走行から戻ってきた田中哲也氏が、そこは3月の仙台にも関わらずおもむろに着ていたレーシングスーツとアンダーウェアを脱ぎ目の前で上半身裸となった。それだけならピットではよくある光景。驚いたのは、いやむしろ心奪われたのは、田中哲也氏の背中、正確には肩口にある見たことも無いような大きな「こぶ」でした。確かにそれは肩甲骨の上にあるれっきとした「こぶ」でした。反射的に思わず「哲也さん。その肩にあるのは、なんですか?」と尋ねる。田中哲也氏は、「シートが良くないとすぐにこうなるんですよ。ここずっといろんなクルマのインプレッションをしていましたから . . . 」と笑って答えた。仙台でテストしていた何台かある開発車両GT-Rの1台もたまたまRECAROシートではなかった。シートが良くないと身体への負担が大きくなる。サーキットでのタイムアタックであれば、その負荷は尋常ではない。そういった現場は何度も見てきたし、光栄にも多くのドライバーも見てきました。それでもシートが悪い。だから身体にあれほど顕著な反応が現れる。そんなドライバーを見たのは初めてでした。我々レカロの開発スタッフが正式な教育を受け、何年も経験を重ね、幾つモノの評価項目を共通化して、身体でシートを評価する域に達するものの、田中哲也氏は身体そのものが生まれつきテスターとなっているのです(本人にとっては嬉しくもないかもしれませんが . . . )。まさにレカロが求めるドライバー。あまりに衝撃で、あまりに興味深く、仙台から戻りすぐに田中哲也氏にアポを取りました。

 

しばらくして田中哲也氏に再会し、プロのレーシングドライバー、そして日本が誇るハイパフォーマンスカーGT-Rの開発ドライバー田中哲也氏にシートの話を伺う。例えプロのドライバーであってもシートやクルマに関して感覚的な表現は出来ても、物質的というか技術的な表現で話を聞くことは容易ではない。想像しうるに知識や語彙の問題ではなく、実際に感じていることや経験していることがあまりに高度過ぎて、感覚的な表現が先にでてくるのではないでしょうか。ところが田中哲也氏は、プロのドライバーが何を感じているか、何を求めているか、どんなときにどんな性能を感じているのかなど、多くのことをわかりやすく表現してくれました。またひとつ田中哲也氏に心奪われた瞬間でした。

 

レース活動をしないレカロ・ジャパンにも関わらず、それからすぐに田中哲也氏とブランド・アンバサダーとしての契約をさせていただきました。それ以降、毎週あるいは少なくとも毎月のように田中哲也氏とは電話や直接会って、さまざまな情報交換をさせていただいています。田中哲也氏は、GT-Rに採用されるレカロシートは勿論、ニュルブルクリンクで鍛え上げられたレカロスポーツシートの最高峰SP-X Avantの開発にも関わっています。今日は鈴鹿。翌日は菅生。富士に移動して鈴鹿。翌日また富士。というように毎日全国のサーキットを多忙に飛び回る田中哲也氏。移動するプライベート車両にもレカロのSportsterを使用。「あのシートに変えてから移動が本当にラクになりました」と笑顔で語ってくれました。